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インバスケット演習のポイント②

  • minnanoassessmento
  • 2022年10月16日
  • 読了時間: 6分

前回「インバスケット演習に一つの正解はない」が正解と正論を正々堂々と…。


そして「この続きを記事にすると長引きそうなので、ご興味ある受講者の方はお問い合わせください」とお願いしましたところ、皆さまからいろいろなご意見をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。


「それでも正解はありますよね」の方が30%、「やはり正解はないですよね」の方が65%、「どっちなんでしょうか?」の方が残りといった感じでした。


前提ですが、インバスケット演習の範囲を定めて話を進めないと混乱する可能性があります。そこで、ここでは今回は「インバスケット演習【㈱何とか産業】」ではなく、その中の1つの案件、例えば「案件5 部長からのアドバイス」について正解があるかという前提で話を進めていきます。


さて、私たちの基本的な考え方として、インバスケット演習は研修グッズではなく、あくまで人材アセスメント・昇進昇格アセスメントの中で活用するためのグッズとしています。なので、「案件5 部長からのアドバイス」をはじめとして、案件1~案件25の各々の指示内容を確認し、いくつかのコンピテンシーの評価(インバスケット演習での評価、あくまで総合評価への材料としての評価)を進めます。


「案件5 部長からのアドバイス」を例にすると、「書かれている内容を正確に理解している」「他の問題(案件)との関連性を把握している」「部長のアドバイスの不思議な部分を認識している」「部長のアドバイスの価値ある部分は認識している」「部長が不思議なアドバイスをしている背景を捉えている」「そのアドバイスの価値ある部分を活用して、本質的な問題の解決策を立案している」「立案した解決策の実施に向け、組織的な体制をイメージし、関係部門に依頼を行っている」「関係して何をどこまで誰が動くのかを具体化している」「部長の面目に意識を向け、その考え違いを正すため、言葉を選んで返信をしている」などなど、1つの案件で1つのコンピテンシーを評価する構造ではなく、1つの案件で当然、複数のコンピテンシーが評価されるよう意識的に無意識的にインバスケット演習は作成しています。


これは、1つの案件でしか1つのコンピテンシーを評価しないとなると、例えばその案件が未処理であった受講者が不利になってしまうからです。


ということは「案件5 部長からのアドバイス」で、理解・分析・創造・計画・決断が仮に評価されるとしたとき、「一つの正解」を設定してしまうことは現実的に不可能であるということになります。


まず、良否(2段階)でなく、3段階や5段階、6段階、7段階などで評価することが人材アセスメントの基本ですから、案件毎に「理解が7の解答、6の解答、5の解答…、分析が7の解答、6の解答…(以下、続く)」と照合できるモノを作成できるアセスメント業者はまず存在しないと考えています。


「イヤ! 弊社はIBの案件毎で、5コンピテンシー×6段階の照合できるモノ、つまり正解リストを作成しています」というアセスメント業者がいたとしても、その内容は推定ですが表にできるものではないレベルではないでしょうか。


かなりの確率ですが、これを宣うアセスメント業者の正解リスト(評価項目など)は、以下のようになっているはずです。


案件5における【理解する力】の評価チェックリスト

・「書かれている内容を極めて正確に理解している」…6

・「書かれている内容を相当正確に理解している」…5

・「書かれている内容をかなり正確に理解している」…4

・「書かれている内容を概ね正確に理解している」…3

・「書かれている内容の理解は十分でない」…2

・「書かれている内容の理解は不十分である」…1


これは解答の正解リストではなく、解答をみたアセッサーの解釈(印象?)リストに過ぎません…。


ただし、この解答をみたアセッサーの解釈(印象?)リストを設定しているアセスメント業者は良心的で、アセスメントの価値を高めるための努力を怠っていないといえます。


中には「案件5における【理解する力】の評価チェックリスト」ではなく、「インバスケット演習における【理解する力】の評価チェックリスト」をもって、客観的で合理的な評価を行っているとしたり、「【理解する力】の評価チェックリスト」、つまり案件毎ではなく、演習毎でもなく、各演習を串刺す段階のレベルで客観的で合理的だとしたりしているケースもあるようです。


このように、インバスケット演習の案件毎に多くの関係者が納得できる正解、あるいはそのコンピテンシーの最終評価と案件毎評価の関係性が確かであることを十分に説明できるだけの正解を設定しようとなると、とてつもない労力がかかることは間違いありません…。


結論として、インバスケット演習の案件処理の具体的な解答内容と、評価レベルを完璧にリンクさせるもの、つまり以前に定義した「一つの正解」はエルドラドとしては存在するはずですが、現実的に「5コンピテンシー×6段階=30種類の正解(照合先)をインバスケット演習の25案件毎=750の正解(照合先)を具体的に設定すること」は極めて難しくなっています。


これは、「750の正解(照合先)を設定すること」が難しい以前に、これをイメージしながらインバスケット演習を作成することが現実的に難しいからです。いや1年半の月日と3500万円の予算があればできるかな…。


他にも以下のような現実があります。


案件5における【分析する力】の評価チェックリスト

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景を極めて論理的に捉えている」…6

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景を相当論理的に捉えている」…5

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景をかなり論理的に捉えている」…4

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景を論理的に捉えている」…3

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景の論理的な捉えは十分でない」…2

・「部長が不思議なアドバイスをしている背景の論理的な捉えは不十分である」…1


これは、解答をみたアセッサーの解釈(印象?)リストですが、具体的に設定するとなると、どのような内容が、どのような表現で書かれているかを明文化する必要がありますが、ホントに難しいです。


案件5における【分析する力】の評価チェックリスト

・評価6の具体的な解答例は以下の通り

 ①「部長のご意見は尤もですが、以前に成果が上がった〇〇会社さんの事例を重視してい 

   るような気がします」

 ②「部長のお考えは尤もですが、昨年7月の〇〇と✕✕の合弁と今回のケースは共通項目  

   が少ないと考えています」

・評価5の具体的な解答例は以下の通り

 ①「参考にさせていただきますが、●●HDへの対応は過去の経験則が通用しないのでは ないでしょうか」


このような具体的な解答の評価チェックリストがあった場合、評価6と評価5、解答した受講者の方の捉えた背景は同じでですが、書き方一つによって評価が分かれるでしょうし…。また、具体的な解答例を事前に用意した場合であっても、該当しないアウトプットが登場することは日常茶飯事で、一つのインバスケットを5年10年、20年使用しているインバスケット演習でも「え? こんな処理? なかなか鋭いな~」が未だに登場します。


その改訂にかけるコストを考えると、つい解答をみたアセッサーの解釈(印象?)リストに逃げたくなる自分も存在します…。お恥ずかしいことですが…。


と長々と愚痴をこぼしてきましたが、「一つの正解」の設定に向けて私たちアセスメント業者はこのようにジタバタとあがいております。だってここをクリアしなければ人材アセスメント、昇進昇格アセスメントの意味あるAI化も達成することができないと考えているからです。着地は遠く、現実に達成できるのか不安だらけですが、道を踏みしめて進んでいく所存です。


最後に、「インバスケットには正解がないです!」「だってビジネスやマネジメントに正解は存在しませんよね。エッヘン。」と弊社も軽口で対応するケースがたまにありますが(受講者の方にここまで長々と内幕を説明するのはどうかながあるため)、裏側ではこのような状況があることをご理解いただけると嬉しいです。





 
 
 

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